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むし歯の仕組みとキシリトールの効果

まずは、こちらの写真を見てください。この黒いツブツブは、2人の妊婦さんの唾液から検出された「ミュータンス菌」のコロニー(集まり)です。ミュータンス菌は歯垢(プラーク)の中で繁殖して酸を作り出し、歯を溶かしてしまう、むし歯の原因菌です。
むし歯リスクの高さの指標の一つとして、ミュータンス菌の量が挙げられます。唾液1ml中に10万個以上いると、「むし歯ハイリスク」。写真の「介入前」はキシリトールを摂取する前のミュータンス菌の量を示し、むし歯リスクの高い状態です。そして、それぞれの右側がキシリトールを3カ月間摂ったあとのミュータンス菌の量です。両者とも「介入前」と比べてミュータンス菌の量が減少していますね。
今日はミュータンス菌数を減らす効果がある成分、キシリトールが、なぜ妊婦さんに有効なのかをお話しできればと思います。

静岡県立大学短期大学部 教授
キシリトールを用いたミュータンスレンサ菌の母子伝播予防のための介入研究を2010年に発表、著書に「マイナス1歳からはじめるむし歯予防」

Q01 妊娠中のママはむし歯になりやすいってホント?

妊婦さんの56.3%が、ミュータンス菌の多い「むし歯ハイリスク」
よく「妊婦さんはむし歯になりやすい」と聞きますが、実際にリスクは高いのですか?「歯からカルシウムが抜けて弱くなる」といったウワサもありますね…。
はい、妊婦さんのむし歯のリスクは高いと言えます。ある産婦人科で400人の妊婦さんの唾液中のミュータンス菌数を調べたところ、半数以上(56.3%)の妊婦さんがミュータンス菌の多い状態、「むし歯ハイリスク」でした。昔から「子どもが1人生まれたら1本歯を失う」とか、「お母さんの歯のカルシウムが子どもに取られる」とか、伝説のようにまことしやかに言い伝えられてきました。でも、実際のところは、お腹の赤ちゃんの成長のためにお母さんの歯からカルシウムが使われることはありません。歯を失う原因となるむし歯や歯周病は、基本的に口の中の細菌が関わって生じる病気ですので、妊娠による口の中の環境変化が主な原因です。理由としては第1に、妊娠によって女性ホルモンが増加すると歯ぐきの炎症が過剰に起こりやすくなり、また歯周病菌が増殖しやすくなります。さらに唾液の粘り気が増し、分泌量が減少するため口の中の自浄作用が低下します。第2には、つわりのために歯ブラシを見ただけでも吐き気をもよおしてしまって、口の中に入れるなんてとても無理…というわけで清掃が困難になります。第3に、妊娠を機に食の嗜好性が変わり、食習慣が変わります。そのため、ミュータンス菌や歯周病菌が増加しやすく、口の中の環境が不良になる結果として、妊娠中はむし歯や歯周病のリスクが高まります。
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Q01 妊娠中のママはむし歯になりやすいってホント?

ミュータンス菌は、家族内で伝播します。赤ちゃんのために、伝播予防の対策をとることをおすすめします。
赤ちゃんのむし歯予防は歯が生える前から行なう必要があるというのは本当ですか?
はい。そもそもむし歯という病気は、細菌が起こす感染症であり、さらに糖の摂取や不十分な歯みがき習慣によって進行する生活習慣病でもあります。一般的に感染症とは、細菌やウイルスを持っている人から持たない人にうつる病気です。むし歯については、ミュータンス菌の感染が原因となります。「生活習慣病」としてのむし歯の対策は歯が生えてからになりますが、「感染症」対策は歯が生える前からでき、しかもその時期から取り組むことが有効なのです。
赤ちゃんはまだ歯が生えていなくても、ミュータンス菌に感染することがあるのですか?
はい。ミュータンス菌にとって歯は「すみか」なので、歯が存在するほうがすみつきやすく(定着しやすく)なります。しかし、現実的には歯がなくても定着します。歯がないとミュータンス菌は野宿しているようなものですが、歯が生えるとタワーマンションが建つようなものなので、より定着しやすくなるのです。
でも、乳歯はむし歯になってしまっても、いずれ生え変わりますよね。永久歯になってからの対策では遅いのですか?
そう考えている人も見受けます。でも、乳歯の時に重症なむし歯になった子どもは、永久歯に生え変わったあとも重症なむし歯になりやすいのです。むし歯が原因で歯並びとかみ合わせが悪くなり、大がかりな歯科矯正を要する患者さんもいます。永久歯のむし歯予防を成功させるためには、乳歯のむし歯予防が重要なのです。
乳歯のむし歯予防をラクに成功させるには、具体的にはどうすればいいのですか。
生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、むし歯菌は全く存在しないのです。つまり、むし歯が発現する過程の始まりは,ミュータンス菌の感染(伝播)です。基本的には家族内伝播で、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんからも伝播します。なかでも赤ちゃんとの接触機会が最も多いお母さんが主たる感染源になることが多いのです。そこで、母から子へのミュータンス菌伝播を予防するために妊娠期からお母さんの口腔ケアを実施することは“プライマリー・プライマリー・プリベンション”と呼ばれ,現在の小児う蝕予防の最先端ストラテジーと考えられています。昔から知られている感染対策としては、まず保菌者に対する除菌のような「①感染源対策」として家族全員、特にお母さんの口の中をきれいにしてミュータンス菌の量を減らす。感染経路を遮断する「②感染経路対策」として、お箸やスプーンを赤ちゃんと共有しない。そして、うつされる側に対する「③宿主対策」としては、ミュータンス菌の定着を促進する作用のある砂糖(ショ糖)を与えるのを控えることになります。でも、これらの感染対策の知識があっても実際には継続的な実践は困難なのです。してはいけないと頭でわかっていても、多くのお母さん達はスプーンを赤ちゃんと共有し、砂糖を含む飲料や食品を与えてしまうのです。
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Q03 赤ちゃんのむし歯予防の始めどきは?

お母さんの妊娠中から始められ、簡単で継続しやすく、赤ちゃんの虫歯リスクを軽減する方法があります。
では、いつからむし歯予防を始めるのが効果的ですか?
お子さんが生まれる前、すなわちお母さんの妊娠中から始めるのが有効です。キシリトールをお母さんが摂取することで、お母さん自身のミュータンス菌が減少し、さらにミュータンス菌が歯垢のもととなるネバネバを産生できなくなるので、歯にくっつきにくくなります。そして、赤ちゃんへミュータンス菌が伝播し定着するのを防ぐ効果につながります。私はこれを「マイナス1歳からはじめるむし歯予防」と呼んでいます。
仲井先生のご研究でその有効性が証明されたそうですが、どんな試験だったのですか?
ミュータンス菌を多く有するむし歯ハイリスクの妊婦さん107名をキシリトール群と対照群の2群に分けて比較対照試験を行ないました。対照群の妊婦さんには歯みがき指導や食事指導を受けてもらいました。キシリトール群の妊婦さんには、対照群と同じ歯みがき指導・食事指導に加えて、キシリトール入りガムを妊娠6ヶ月から13ヶ月間の間毎日4回以上摂取するようお願いしました。その結果として、妊娠中からキシリトールを摂っていると、お母さん自身はもちろん、赤ちゃんへミュータンス菌伝播も予防できることがわかったのです。さらに、生後9ヶ月時点でお母さんがキシリトール摂取を中止しても、母子伝播予防の効果は2歳まで続くこともわかりました。

妊婦さんのキシリトール摂取が、赤ちゃんへのミュータンス菌伝播を遅らせる

ミュータンス菌が多い妊婦さんが、キシリトール群と対照群にランダムに振り分けられました。対照群の人は、歯磨き指導や食事指導を含む保健指導を受けました。キシリトール群の人は保健指導に加え、妊娠6ヶ月目から出産後9ヶ月までの13ヶ月間、甘味料としてキシリトールが100%のチューインガムを噛みました。1日あたり5g以上の摂取を目標にしましたが、介入期間における実際のキシリトール摂取量は平均3.83gでした。そして、子どもが2歳になるまでの間、子どもの口の中からミュータンス菌が検出されるかどうかを評価しました。その結果、キシリトール入りチューインガムを噛んだ母親から生まれた赤ちゃんは、対照群の赤ちゃんに比べ、生後9ヶ月から24ヶ月までの間、ミュータンス菌が検出される割合が有意に少ないことがわかりました。

(出典)
Nakai Y, et al. Xylitol Gum and Maternal Transmission of Mutans Streptococci. J Dent Res 89(1):56-60, 2010
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Q04 キシリトールの優れた機能とは?

キシリトールの摂取は、おいしくて継続しやすく、最小限の努力で最大限の効果を期待できるむし歯対策のひとつです。キシリトールの摂取は、おいしくて継続しやすく、最小限の努力で最大限の効果を期待できるむし歯対策のひとつです。
キシリトールを摂取すると、なぜむし歯のリスクが減るのですか。
まず、むし歯がどのようにできるかからお話ししましょう。ミュータンス菌は砂糖をエサとして、歯の表面でいわゆるウンチとオシッコを作ります。ウンチに相当するのが、歯垢(プラーク)のもととなる白いネバネバ(不溶性グルカン)です。不溶性グルカンの粘着性は高いので、うがいをしただけは剥がれず、ハブラシなどで機械的にこすり落とさないと除去できません。本来、ミュータンス菌そのものが歯にくっつく力はそれほど強くはありませんが、砂糖を食べて不溶性グルカンが作られてしまうと、歯の表面から剥がれにくくなってしまいます。
次に歯にくっついたミュータンス菌は、オシッコをします。オシッコに相当するのが、「酸」です。歯の表面のエナメル質は、体中で最も硬い組織ですが、そのまま放置するとむし歯菌が産生する酸によって歯がどんどん溶かされ、最終的に穴があきます。
それがむし歯ですね。
はい。簡単に言えば、むし歯という病気は、ミュータンス菌が出した排泄物によってできる病気だと言えます。
では、口の中にキシリトールが入ってくると、どうなるのですか。
ミュータンス菌は砂糖と勘違いして、キシリトールをガツガツ食べてしまいます。ところが、砂糖を食べたときと違ってウンチ(不溶性グルカン)もオシッコ(酸)も産生できません。さらにフン詰まりで死んでしまいます。その結果、ミュータンス菌の数が減少します。また、不溶性グルカンのネバネバが産生されないため、ミュータンス菌が歯にくっつきにくくなります。それで、赤ちゃんの口に伝播したミュータンス菌が定着しにくくなるのです。
このようなキシリトールの機能については、海外の多くの研究でも明らかになっていますが、妊娠中からのキシリトール摂取について世界で初めて有効性を検証したのは、私たちの研究です。
キシリトールが「①感染源対策」として働き、赤ちゃんへの伝播を遅らせたということですね。
そうですね。2歳以前にミュータンス菌が伝播すると、むし歯が重症化しやすいことが多くの研究で証明されているので、この時期の予防はとても大事です。お母さんだけでなく、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんも、みんなで口の中をきれいにすることがお子さん、お孫さんのためになります。実はお母さん方からよく「パパが赤ちゃんにチュッチユするのをやめさせたい」という相談を受けるのです。私はお父さんの気持ちもわかりますので、「チュッチュをやめてください」とは言いません(笑)。でも、その代わりお父さんの口の中の環境を整えていただく前提ですので、歯科医院の受診や補助としてキシリトールの摂取をおすすめしています。
最後に、妊婦さんへのメッセージをお願いします。
むし歯予防は、マラソンに似て長期間つづける行ないですから、全速疾走をずっと続けることは難しいのです。その時の状況に応じて「最小限の努力」で「最大の効果」を期待できる方法を取り入れるのが長続きのコツです。歯みがきやおやつの食べ方(生活習慣病的対策)だけでなく、今回ご紹介した感染症対策を妊娠期から実践することにより、多くのお母さん達がラクに子どものむし歯予防の成果を挙げることができたら幸いです。
キシリトールのカロリーは砂糖の75%しかないので、体重増加が気になる妊婦さんにも無理なく継続しやすいですね!仲井先生、どうもありがとうございました。

むし歯リスクの高い成人が無作為に2群に割り付けられ、キシリトール群はキシリトール(2.5g/day)という成分の入ったガムを、対照群はコントロールガムを1回5分間、1日6粒、1年間咀嚼しました。その結果唾液中のミュータンス菌がキシリトール群(64名)は有意に減少しました。

(参考文献)
Cocco, F., Carta, G., Cagetti, M.G. et al.
Clin Oral Invest(2017) 21: 2733.

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その歯と100年。キシリトール。 CM公開中!

人生100年時代が、もうすぐそこに。
でも、歯が生え変わるのは1度だけ。
それは変わりません。
自分の歯と100年つきあう
これからの私たちに。
白樺などから採れる、キシリトール。
口の中からむし歯の原因ミュータンス菌を減らす効果があると報告されています。

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まもなく赤ちゃんをお家に迎える皆さん! 赤ちゃんの歯の健康のために、ママになる前からできることがあります。赤ちゃんをむし歯にしないために、家族みんなでできることがあります。「むし歯予防なんてまだ先の話」と思っている人にこそ読んでほしい、赤ちゃんとママとパパと、むし歯のお話を小児歯科の専門家にお聞きしました。